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August 2008

August 26, 2008

初源的なアニメーションの力。『崖の上のポニョ』を観る。

Posterimage
飛べる人は飛べるけれど、そうでない人は海に飲み込まれる。

賛否両論が多く観るかどうか迷ったものの、『黒猫のタンゴ』以来の子供の素直な歌声に誘われ、ついに映画館に足を運んだ。宮崎駿氏の曰く、できる限り手で書くアニメーションであり、素直に動くことに対する魅力を表現したという。冒頭のオープニング、くらげの軍団とともに溢れていく海の豊穣な世界の描写を見、僕はディズニーの傑作である『ファンタジア』を想い出した。一枚一枚の絵が動いていくと、宇宙が出来ていく。

『ハウルの動く城』しかり、最近の宮崎駿の映画を観ると、重層的な物語をアニメーションの語りに置き換えていく試みに驚かされるものの、少しばかり「アニメーション」としては難解になっている気がした。少女の内的世界を外部化した試みは素晴らしいが、そこにはアニメーションを言語化し理解するというリテラシーが要求される。

『崖の上のポニョ』は、すべて見たままの世界である。見たままに見たことが現実化する。言語化し、自分の価値観と照らしあわすなんて不要だ。見たままを見たままに感じる力が求められる。子供が母親を名前で呼ぶから、そういう映画を見せたくないなどという馬鹿親の書き込みを見たけれど、そういう既成観念こそ不要である。

蓋し、初源的なアニメーションの力は、文字通り生命を吹き込む力である。豊穣な海は母の力に満ち、母はすべてを可能に出来る存在=生命の力である。魚は人間になり、老いた者も若返る。それがこの映画の本質であり、あとは見るだけだ。

そう、海=「産み」の世界なのだと、僕は席を立つとき気がついた。 <tokyotaros>


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